電話を切って、あらためて恐いと思い始めました。7月10日に死ぬのだと思いました。お坊さんもちっとも親切じゃないなあ、うそでもいいからいや冗談冗談といってくれればよいのにと思ってみたものの、結局そうは言ってくれなかったことが大きなショックでした。椅子に座ったまま「やっぱりそうかぁ」としばらく呆然としていました。

やっぱりあの夢は本当だったのだと思った。その時間、電話が一本もかからない。営業社員は誰も帰ってこない。窓の外には通りに車が一台も通らない。真空空間のような不思議な世界。世界中にひとりしかいない。窓の方を見るとまぬけな顔をしてこっちを見ている、生きる気力を失った自分の顔がありました。

回転椅子に座ったままでぐるりと後ろを向くと、書棚があり、今まで読んだ本がたくさん並んでいました。講演会を主催していましたから、講演会の講師の著書を読んだり、気に入った箇所にはラインを入れたりした、そういう本をぎっしりと詰め込んでいました。