顔をふっとあげて、あぁ誰かいなかなと探しました。私の机は二階の端っこでしたから、誰かいないかと思って、部屋の内部を見回したのです。

営業社員が何人かいるはずなのに誰もいません。みんな出払っているのです。「あぁひとりなんだ」と思って、暗くなった外に目をやると、窓のすぐそこに交差点の信号があって、その窓からは行き交うクルマが見えるのですが、その瞬間だけ、クルマがまったく通らないのです。

奇妙な静寂。節分の夜。すべてが終わったと思いました。世界中にひとりしかいない、そんなことを思いました。本当に死ぬのだなと、根拠はないけど私のすべてが終わったのだと思いました。

でも本当かなぁという思いが、ふと頭をもたげます。