(21)達弥西心のわかりやすい話「開業」

達弥西心のわかりやすい話「開業」

●かわたれ   節分の夜、それは起こった(22/23) - HMU 達弥西心

電話を切って、あらためて恐いと思い始めました。7月10日に死ぬのだと思いました。お坊さんもちっとも親切じゃないなあ、うそでもいいからいや冗談冗談といってくれればよいのにと思ってみたものの、結局そうは言ってくれなかったことが大きなショックでした。椅子に座ったまま「やっぱりそうかぁ」としばらく呆然としていました。

やっぱりあの夢は本当だったのだと思った。その時間、電話が一本もかからない。営業社員は誰も帰ってこない。窓の外には通りに車が一台も通らない。真空空間のような不思議な世界。世界中にひとりしかいない。窓の方を見るとまぬけな顔をしてこっちを見ている、生きる気力を失った自分の顔がありました。

回転椅子に座ったままでぐるりと後ろを向くと、書棚があり、今まで読んだ本がたくさん並んでいました。講演会を主催していましたから、講演会の講師の著書を読んだり、気に入った箇所にはラインを入れたりした、そういう本をぎっしりと詰め込んでいました。

●かわたれ   節分の夜、それは起こった(21/23) - HMU 達弥西心

お坊さんが言うのだから間違いない、やっぱり死ぬのだと思いました。気分がそんな感じになってきて、死ぬのが恐いとは思いませんでしたが、次第に無気力になっていくのを感じました。受話器を握りしめたまま呆然としていました。

そして電話の向こうのお坊さんもこちらの私がいつまでも黙っているものですから、気にされているのを感じます。ちょっと脅しすぎたかなという感じだったかもしれません。

「まぁでも、7月10日というとあと半年もあるしなぁ」と言われて、でも私はちゃんと計算してあと5ヶ月しかないと思っています。お坊さんは続けて「こちらに来たときは電話してくれ。一緒に酒でも飲もうや」と伝えます。

私は、いや飲めない、この人につきあっていると振り回されてしまう、と思っています。「いや結構です」と、大人気ない口調で一言告げました。自分から電話をかけておいて「失礼します」と電話を切ったのです。そうです、失礼です。二度と電話をするものかと思いました。

●かわたれ   節分の夜、それは起こった(20/23) - HMU 達弥西心

するとお坊さんが、にわかに私に分からない専門用語を使って説明し始めたのです。そこで私が気が付けばよかったのですが、私にはそんなことを聞きたいのではなくて、という思いがありましたので、早く本題に入ろうと「ところでその日なんですけど私、五黄で五なんですけど死ぬんでしょうか」とお坊さんの話をさえぎるように単刀直入に質問をぶつけたのです。いけないことをしてしまいました。

すると、電話の向こうでウッと止まったのがわかりました。そしてやや躊躇ったかのように「おお、ようわかったね」という言葉が聞こえてきました。

意地悪されたのだと思います。入り込みすぎたために「よくわかったね」と応答されたのです。

「死ぬのかって?そんな馬鹿なことないじゃないか」という言葉を期待していた私は、思いもよらない言葉に血の気がすーっと引くのを感じました。

●かわたれ   節分の夜、それは起こった(19/23) - HMU 達弥西心

「四つの盤があってですね」と。最初は黙って聞いてくれたのですが、そのうち「夜11時で日が替わるんですよね」、「おう」とかなんとかやりとりがあって、次第に雲行きがあやしくなってきて、「そんなふうに見ていくとですね、7月の10日のところまでにいくと、つまり9日から10日になる時なんですが、年盤・月盤・日盤・時間盤の四つの盤の五という数字が、私五黄ですから、五という数字がですね、北と南と東と西に散らばるんですよね」と言った途端に、「おう、そのことはわしも注目しとった、暦を見てこうなるな、と。あの日をもって右回りになるか左回りになるかは、わしもちょっと思っていたところだ」と。

要するに、専門家である自分も気が付いていたのだが、ど素人のおまえがどうやってそれに気が付いたんだと言いたかったのだと思います。専門家の領域に土足で踏み込んでしまったのです。

●かわたれ   節分の夜、それは起こった(18/23) - HMU 達弥西心

そういうことがあって、お坊さんとはあまりそういう関係では関わりたくなかったのですが、死ぬの生きるのという事態になった時、相手は専門家ですから、私は「あの時ですね・・・」と「あること」を話し始めました。

「あのあと、本屋に行ったんです。本屋に行って、暦を買ってきたんです。店には何種類かあって、3冊ほど買ってきたんです。買ってきてそれを毎日ずーっと読んでいたら、あることが分かったんです」と一気にしゃべった。お坊さんは暦の専門家、こちらは全くのど素人、教えてやろうというのに拒否しておいて、「分かったんです」などとしゃべってしまったのです。

●かわたれ   節分の夜、それは起こった(17/23) - HMU 達弥西心

この節分の夜の電話で、そのことのお礼を言ったのです。

「いやいや、まぁまぁ」という話で、私が「あの時ですね・・・」と、年末のその日の、その後のことを持ち出した、これがとんでもないことだったのです。

お坊さんはその頃私に「いろんなことを教えてやろう」と言ってくれていました。「ちょいと修行すりゃ、○○くらいにゃなれる。この間もその人に祓い方とか祀り方を教えたんだ。教えてやろうか」と誘われていたのです。

私は「申し訳ありませんが結構です。知らなくていいことだってあるでしょう。そんなときは相談しますよ」などと言い訳しながら断っていました。

●かわたれ   節分の夜、それは起こった(16/23) - HMU 達弥西心

「あ、年末にはたいへんお世話になりました。朝早くに電話で失礼しました。ありがとうございました」

その日私はホテルに泊まっていて、話は長くなりますが、夕方食事を済ませると退屈でしょうがなく、雑誌を買ってきていたので、ざっと読むのだけれど面白くない、テレビをつけても見る気もしないのです。

死にたくなるくらいに暇だったので、机の上に置いてある案内板に誘われてマッサージを頼んだのです。夕方のあまりに早い時間だったせいか、やがて部屋にやってきたマッサージ師は新入りで、なんと今日入ったばかりという新人でした。

ところがこのマッサージ師が部屋を出ていったあと、突然気分が不安になったのです。自分が自分でないような感じです。夜中は我慢していました。眠ろうと目を閉じても、すぐに目が覚めるのです。

これはお坊さんに助けを求めるしかないと思ったものの、夜中は迷惑だろうと朝まで耐えて待ち、朝になるのを待ってたまらず電話をしたのでした。

●かわたれ   節分の夜、それは起こった(15/23) - HMU 達弥西心

電話をしたら、思いがけず本人が出られました。私の心の準備が整わないままに本人が出られたものですから、「あ、こんばんは・・・。今日は節分ですが・・・」と、慌てていますから切り出し文句がとても不自然です。

「ああ、そうですなぁ」

「あのう・・・、ま、一年間お世話になりました」と言いました。

7月10日になったら死ぬのだろうかということを聞きたいのですから、次は、「お世話になりました。また一年よろしくお願いします」と続けるところを、どうしてもそれが言えませんでした。今電話をかけているのは、死ぬか生きるか、そのことを聞くためだと思っているわけです。それが、単刀直入に言えないものですから、そういう時はなぜか回りくどい言い方になるのです。それで、余計なことまでしゃべってしまったのです。

●かわたれ   節分の夜、それは起こった(14/23) - HMU 達弥西心

どのように切り出そうか、いきなり電話で「私、死ぬのでしょうか」もなんだか変だなぁと思いながら、でも今日はちょうど節分だから、この一年お世話になりましたというご挨拶ということにしようと決めて、電話をかけることにしたのです。

ひとつには、「暦を買って帰った年末の出来事」があるのですが、その時のお礼もあるし、と自分に言い訳しながら電話をかけることにしました。

電話口で奥さんと話をしているうちに、何か切り出しの話題も見つかるだろうと思ったのです。夜7時半過ぎでした。

●かわたれ   節分の夜、それは起こった(13/23) - HMU 達弥西心

ふと、ある人の顔が浮かんだ。お坊さんの顔が浮かんだのです。

講演を依頼したことがきっかけで親しくなったお坊さんですが、その方に確かめてみたいと思いました。私が自分のことで誰かに確かめてみようと思ったのは、おそらく初めてです。すべて自分で決めていた私に戸惑いです。急に不安になって、「あの人は詳しいはず、私は死ぬのか生きるのか、聞いてみよう」と思ったのです。
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